「出版コンテンツ研究会報告書」がポット出版のサイトで公開されている。 これは、デジタルメディアが普及した現在、出版業が面している課題と、それに対する 提案をまとめたもの。

デジタル/ネット時代を生き抜く出版コンテンツの活用法
出版コンテンツ研究会報告書 200901
http://www.pot.co.jp/news/200901pck_houkokusyo.html

自分も出版業の端っこにいるものの、見えている範囲はとても狭いから、こうい うものをまとめて公開してもらえるのはありがたい。感謝。

以下気に留まったところ。


3 研究会における主要論点とその要旨
(1)紙とデジタル(所有と利用)の関係
...
また、デバイスとコンテンツは不可分の関係といえる。たとえば、 携帯電話というデバイスだからこそ携帯小説というジャンルは登場した。

メディアを考慮せずに制作はできないし、新しいメディアが新しい表現を生むと いうのはそのとおり。

ただ、コンテントすべてがメディアと不可分というわけでもなくて、各種メディ ア向けに加工しやすいのもデジタルデータのいいところなので、個人的には共通 化と最適化の適切な組み合わせを追求したい。

(2)電子書籍の在り方
今の電子書籍は、紙の書籍の呪縛から逃れられていない。製版データを そのままwebに出すのではなく、デバイスの特性とコンテンツを組み合わ せ、両面から付加価値をつけて再編成する必要がある。また、新しい 配信サービスとの連動も不可欠だ。

ただし、既存の出版社の編集業務は、紙の書籍を電子コンテンツとして 再利用しやすい体制にはなっておらず、またシステム的なツールも存在 しない。音楽業界はCDを製品化する時点で楽曲のデジタル化が完了して おり、ダウンロード事業にスムーズに移行できたが、出版業界ではデジ タル化の費用面で各社躊躇しているのが現状である。

電子書籍の販売は、紙媒体と同じ方法で売ろうとして苦戦している。 電子書籍の価格設定は、再販制度及び紙の本の値段との関係を断ち切った 方がよい。今のところ、電子書籍や携帯小説の流通コストは相対的に 高く、また種類・売上げともに紙の書籍より圧倒的に少ない。電子書籍 の「金になる」ビジネス・モデルは、やはり紙媒体の出版物の強みの 延長線上にあるだろう。独自に価格設定した電子書籍の流通を紙の本と 連動させることも考えられる。ただし、出版社が直販で電子書籍を売る 場合、各社個別に販売システムを構築するのではなく、共有の販売イン フラを持つことが望ましい。

ああもう全く賛成。

まずは内容(コンテント)と見せ方(メディアやフォーマット)とを区別して話 ができるといいな。同業者の間ですら話が通じないことがあるので。ページ分割 されて紙に印刷された静的なテキストだけが本ではなくて、インタラクティブに 変化する電子的なハイパーテキストもまた本といっていいと思う。 (最近は、紙媒体を前提にした話をするときは「紙の本」、電子媒体を前提にし た話をするときは「ebook」と呼んで区別している。)

デジタルデータの整理はXMLベースで粛々と進行中。

今後の本の価格付けは、ソフトウェア製品やサービスの契約が当座の参考になる と思う。例えばライセンス+メディアという感じで。

インフラは、まず互換性・相互運用性が欲しい。独占が生じると淀むから。その うえで、共有して効率化できれば理想的。

(3)出版社の役割
...
紙媒体の書籍の出版においては、出版社が総体としての情報の質に 責任をもってきた。作者や出版社の固有名詞は一種のブランドと なっている。このような信頼性の高いブランドを作り上げる仕組みは、 現在のデジタル出版にはまだ存在しない。将来に残す信頼性の高い コンテンツは、資本投下して作られるべきである。出版社(編集者) によってクオリティコントロールされ、付加価値をつけられた情報と、 インターネット上で誰にでもできる情報発信は等価ではない。

メディアと品質とは直交していると思うものの、品質管理が大事だというのは本 当にそうだと思う。

そして、品質保証の努力を見合うものにするために、書評も充実するといいな。

作品や出版社を利用者が評価し、その評価を共有・検索・比較できるサービスが もっと充実してくれるとうれしい。関係者全員の長期的な益を考えると、複数の サービスが健全に競争しているのが理想的。

(4)著作権システム
電子書籍の普及を阻む一要因として、現行の著作権システムが挙げら れる。出版者側の権利が弱すぎないだろうか。出版者のもつ「編集力 (信頼性の付与、内容の高度化等)」や「クオリティコントロール」 への対価として、何らかの補償が必要なことを国は認識すべきではないか。 従来の紙メディアの出版物は別として、デジタルへの移行期だからこそ、 デジタルコンテンツの補償金制度(=集中管理システム)という利益 分配の新しい枠組み導入のチャンスと考えるべきだ。

これは慎重に考えたい。価値があるなら当事者間の商取引で相応の対価がやりと りされるようにしたほうが健全な気がする。慎重に。

(5)公共基盤
...
たとえば、本のデータ(書誌情報)を公共的に集めて使える状態にし、 商業的な条件をつけずに自由に利用できる仕組みこそ、公共基盤が 担うべきではないか。データのダウンロードが可能になれば、利用者が 自発的な工夫で新たなサービス(使い道)を生み出すこともできる。 現在の公共の書誌データ提供の仕組みは貧しい。たとえば、国立国会 図書館のMARCはOPACからダウンロードすることができない。

賛成。そういう基盤があれば、評価の共有をはじめ、いろいろ面白いことができ そう。

4 新ビジネス・モデルと制度づくりの提案
(2) ビジネス・モデルの提案
01 従来との連続性を重視するアプローチ
「冊子併売モデル」

物理媒体と組み合わせて売るという選択肢は、過渡期の対応として移行の手助け になると思う。

(ただ、サービスを提供しているという視点は忘れないようにしたい。)


他の人とも話をしてみたい。