TeXユーザの集い2009に行ってきた。枯れたテーマとは裏腹に、未来への話や若い 方の発表が予想以上に多かったのが印象的。運営の方々をはじめ、カンファレン スの実現に寄与したみなさんに感謝。
概要とまとめ
TeXユーザの集い 2009
http://oku.edu.mie-u.ac.jp/texconf09/
どういう趣旨のイベントなのかは、吉永さんの記事を。一般向けでわかりやすい。
「TeXユーザの集い 2009」8月29日開催! 直前レポート
http://gihyo.jp/news/report/2009/08/2001
2009年8月20日 吉永徹美
内容については、武藤さんの日記の詳細なリポートを。
KeN's GNU/Linux Diary | TeXユーザの集い2009 参加報告(1)(2)
http://kmuto.jp/d/index.cgi/computer/texconf09-1.htm
http://kmuto.jp/d/index.cgi/computer/texconf09-2.htm
発表を聴いての雑感
KETpic. ベクタ画像はいずれ図形 記述言語で描けるようにしたい。エディタも重要。ソースと描画結果を2-wayで 編集できると理想的。
Suim. 数式の入力が簡単になると、TeXが得意でない人と一緒に仕事をしやすくなる ので、大変助かる。期待大。Firefox以外のブラウザでもMathMLが標準でサポー トされるといいな。
FTEXT. 教材の共有・公有は重要。ライセンスは緩 いとありがたい。
- CCの商用と非商用って、どういう基準で 区別されるんだろう。
EWBのようにTeXにプリプロセッサを 組み合わせるアプローチはかなり有効。ただプリプロセッサでは「今何ページ め」といった実行時の情報を得ることはできないので、そのあたりは LuaTeXに期待。
ewblibのwakuboxも脚注には非対応らしい。脚注を出したければ、 multicolやlongtable を参考に\outputを再定義するのが筋なのか?
TeXUnitが欲しい。テストの支援があれば、プログラムを書いてメンテナン スするのが飛躍的にやりやすくなる。
mkbib. BibTeXに限らず、undocumented featureが多いソフトウェアには泣かされる。
geometry は使ってみたい。「memoirにはならない」でにやり。
ko.TeXで組んだジャーナルの組版がき れい。pdftex由来のmicro-typesetting(文字を微小単位でscaleする機能)が 効いているらしい。
dvibrowserは UIの気が利いていて素敵。Adviのように使えるといいな。
最近のLaTeXプレゼンテーションはLaTeX Beamerかpowertdotらしい。 時間ができたらXHTML+MathML->LaTeX Beamer, powerdotなコンバータを書きたい。
ptexliveは、ptexenc周りがきれいに整 理されて、Debianでも使えるようになるといいな。
- DebianのpTeX関連パッケージは実は存続の危機らしい。八田さんが時間を 割くのが難しいようなら、 香田さんにご協 力いただけないものか。
東大Fink Teamにも期待。編集制作 関係の仮想パッケージを作ろうと思っているのだけど、MacBook+Finkならヒラ ギノ込みのフル機能laptop publisherを実現できるはず。
Vine Linux. 出版現場の事情が分かる開発者っ て貴重だなあ。
振り返って
LaTeXを最近使い始めた一ユーザとして、武藤さんと naoya_tさんくらいしか知っている人がいない 状態で参加したけれど、発表はもちろんそれ以外でも実りがあった。
まず、普段は会えないような人と会うことができた。いつもお世話になっている ツール群の開発者の、pTeXの中野さん・ jsclassesの奥村先生・ DVIPDFMxのCho先生にお礼を言えた。 これだけでも懇親会に行った甲斐があった。そのほかにも、名前を挙げきれない くらいたくさんの人と話ができた。
そして、TeXに対する認識が少し改まった。TeXというと枯れて結晶化した分野と いう印象があったのだけど、外野が思うよりも変化が続いている。Unicode対応 や新しいTeXエンジンへの移行の必要性は共通認識として感じられたし、実際に 手を動かしている人もいる。ゆっくり見守る必要はあるけど、今後が楽しみ。
同時に、自分がTeXに求めるものも分かってきた。自分では手が届かない基盤部分 が整備されてほしいらしい。そうなれば自分で解決できる範囲が広がる。
どなたかが、「この場にいるのはみなユーザである。ユーザの自助努力とその共 有によってTeXは発展してきた」という趣旨のことを言われたように覚えている。 たしかにユーザがボトムアップに拡張できる設計になっているのは大きな強みだ と思う。"On Lisp"の序文 にもあるとおり。
ただ、TeXマクロでの拡張はそろそろきつくなってきた。自分はともかく他人に 覚えてくれと言いにくい。歴史的経緯を考えると仕方がない面もあるのだろうけ ど。たぶんそれはみな分かっていて、だから次世代のエンジンとしてスクリプ ティング可能なLuaTeXが期待されているんだろうと思う。しばらくはupTeXで現 実に対処しつつ、ゆくゆくはLuaTeXなどでpTeXと同等以上のことが楽にできるよ うになるといいな。
また、個人ユーザでできることには限りがある。ソフトウェアは、有力なユーザ 企業がいる時期に大きく発展するように思う。仕事で使われることで現実世界の ニーズが明らかになるし、問題を解決するためにリソースが投じられるから。日 本語TeXでいうなら、アスキーやNTTがそうだったんだろうと思う。今はそのあた りどうなんだろう。そういう存在が現れれば、予想外の進展があるかもしれない と思う。もちろんそのためには、関連する産業が、十分な利益を生み出し人材を 引きつける魅力的なものでなければならない。
いずれにせよ、次回も開催されるなら参加したい。できれば何か見せられるもの を持って。
Other Articles
- 17 Jul 2010 : とちぎテストの会議
- 17 Jul 2010 : 本のテスト(あるいは人間向けソフトウェアのテストについて)
- 16 Jul 2010 : オブジェクト倶楽部2010夏イベント
- 17 May 2010 : 『プログラミングRuby 1.9』近日発行
- 11 Apr 2010 : TOC 2010の資料を読んで
- 20 Mar 2010 : Shibuya.lisp TechTalk #5
- 20 Mar 2010 : 『プログラミングClojure』の編集制作におけるLisp/Scheme