Philip K. Dickの『高い城の男』を読んだ。
- 『高い城の男』
The Man in the High Castle
フィリップ・K・ディック(著) 浅倉 久志(訳)
ISBN:978-4-15-010568-6 刊行日:1984/07/21
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/10568.html〔ヒューゴー賞受賞〕第二次世界大戦が枢軸国側の勝利に終わって から十五年、世界はいまだに日独二国の支配下にあった。日本が 支配するアメリカ西海岸では連合国側の勝利を描く書物が密かに 読まれていた……現実と虚構との間の微妙なバランスを、緻密な 構成と迫真の筆致で描いた、D・K・ディックの最高傑作!
第2次大戦で枢軸側が勝利した世界で、人々がそれぞれの運命と苦闘する話。
個人的には勇気と希望の物語として読んだ。暗く苦しく居たたまれないなかに、 救いがある。
やっぱり工具とモーターをマッカーシーからとりもどし、自分の工場を持ち、さ さやかながら商売をはじめるべきだ。あの恐ろしいコウがなんといおうと、やれ ばいい。せっせと働き、自分なりに最後まで創造的な仕事をすればいい。できる だけりっぱに、できるだけ積極的に、人生を生きていくんだ。われわれにとっ て、全人類にとって、城郭が濠の中へ崩れ落ちる日まで。易の託宣がおれに告げ ているのは、そういうことだ。どのみち、運命はいずれわれわれをなぎ倒すだろ うが、それまで、おれには自分の仕事がある。自分の頭と手を使わなくちゃいけ ない。(p.77)
チルダンの心は平安に満たされた。おれはとことんまでやって、生きのびたんだ な、と彼はさとった。(p.275)
「私は罪の許しを欲しています。」田上はいった。「しかし、あなたが私にそれ を与えることはできない。おそらく、だれにもできないでしょう。… (p.358)
「わたしにとって小説を書く上での大きな喜びは、ごく平凡な人物が、ある瞬間 に非常な勇気で何かの行動をするところを描くことだ。その行動によって彼はな にも得をするわけではなく、現実世界に名前が残るわけでもない。とすれば、そ の本は彼の勇気を讃える歌なのだ。 (解説p.394、ヴァーテックス誌74年2月号、ディックへのインタビューより)
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