2009-02-07に国立国語研究所「第2回ワークショップ: 文字 ―文字の規範―」を聴 講してきた。
「第2回ワークショップ: 文字 ―文字の規範―」のご案内
http://www2.kokken.go.jp/egov/ws_moji090207.html2009年2月7日(土)13:15より 国立国語研究所 多目的室
他の方の報告。
文字の旅人 - 「ワークショップ:文字」に行ってきました
http://typojourney.blog81.fc2.com/blog-entry-427.html
以下自分用のメモ。間違い多数につき要注意。
基調報告 當山日出夫(立命館大学グローバルCOE)
「景観文字と字体規範−「祇園」のその後−」
[聞き損ねてしまった。]
発表(1)小形克宏(フリーライター)
「大日本印刷における表外漢字の変遷」
1950年代から1960年代にかけて、大日本印刷(だけ)は略字体を積極的に推進し たが、1970年代には康煕字典体を中心とする姿勢に戻った。これは1950年代の国 語施策に合わせたためではないか、という調査結果。
依るべき規範の変遷が見て取れる:
- 略字(理念を解釈して具体化することで準拠する)
- 康煕字典体(表に準拠する)
- コード(デジタル化にともない、グリフではなくコードが基準となった)
[スライドと資料が労作。]
ご来場御礼 - もじのなまえ
http://d.hatena.ne.jp/ogwata/20090208/p1
発表(2)小池和夫(築地電子活版)
「JIS X 0213 漢字の選定規準とその問題」
JIS X 0213では、実際に使われていたことが確認できる文字だけをJISに入れよ うというのが原則だった(電話帳などが資料になる)。現状優先。辞書になくて も使われていればそのグリフから起こす。一方UCSは、文字鏡に入ってる文字は 結構入っていたりする。
発表(3)狩野宏樹(イワタ)
「字形規範とフォントデザイン」
[フォントベンダの立場からの現状報告。]
(抽象的な)「字体」に関する規範が(具体的な)「字形」に関する規範として 受け取られてしまっているのではないか、とのこと。
商用フォントベンダのケースとして、互換性や検証コストを考えて、あえて「正 しく」直さなかったことがある。
直接の顧客が印刷会社の場合、フォントベンダはあるものを全部渡して、選択は 先方に任せればよい。しかしそうでない場合、組み合わせを吟味して、統一され たセットを作る必要がある。その経験が過去になかったので苦労した。 またフォントベンダは(規格等に依るのではなく)過去の作品を基にして、例示 によってフォントを起こしていることが多くある。 平成フォントを作り直すとなると、(文字を加えることになるので)Adobe CMap にも影響がある。
発表(4)師茂樹(花園大学)
「携帯電話の絵文字のUnicode登録をめぐる議論の動向」
[先日の携帯絵文字Unicode化の提案に関する報告。ご本人のまとめがとても詳し い。]
携帯電話の絵文字のUnicode登録をめぐる議論の動向 - もろ式: 読書日記
http://d.hatena.ne.jp/moroshigeki/20090208/p1
[個人的には、既に泥水が少し混ざっているのだからもっと混ぜてよい、とは思 わない。自分たちがどういう未来を望むのかを議論して実現するのが大事じゃな かろうか。]
発表(5)池田証寿(北海道大学)
「字書記述と実用例とを連関させた漢字字体の研究方法について」
[門外漢すぎてよく分からなかった……。]
発表(6)林立萍(台湾大学)
「台湾の大学入試センターの日本語語彙表に見られる漢字」
[結論が聞き取れず。でもこういうふうに文化が交わったところで何が起きたか を明らかにしている研究があるのは興味深い。傍目八目で日本語を客観的に見ら れるかも。]
全体討論
- 文字の規範は根本的な規範ではなく、手続き上の規範・決まり事である。「車 は左側通行」と同じ。この2つは分けて考えてほしい。1980年以降は道路交通法 ばかりだ。考える基準となるのだから思考停止してはならない。(トヨシマ先 生)
- 絵文字が規範というものを再考させた。このことが面白い。(師先生)
- 「人名漢字……」がいつからそんなに依拠されるようになったのか知りたい。 (安岡先生)
- 常用漢字の役割が終わっていないか考えるべきでは。その規範が、そもそも必 要かどうかをよく考えようよ。絵文字は感情を表すツールが必要になったから 使われている。個人間のやりとりにコード化された文字が使われている。そう いう世の中でどうバランスを取って行くかを考えよう。(山本さん%あくまで個 人としての意見)
- 昭和15年に小学校に入学した人間として言わせてもらえば、私たちの混乱と犠 牲の上にあなた方は楽ができている。どうか歴史に学んでほしい。今度、内村 鑑三の全集を精興社で組んで岩波から出す。原稿は手入力してJIS化した。内村 は鴎外や逍遙に比べて簡単だから良い資料になるはず。[當山先生によると、 まず文字鏡を使って電子化して、精興社で分析してJIS第3、第4水準に変換した とのこと。]
[「基本に立ち返って、規範そのものの意義を問え」という指摘にはっとした。]
グリフのごく細かな違いにもこだわり、一次情報を追いかけて、とことん議論を してくれる人がいるおかげで、普段何も考えなくても混乱なく文字を使えるのだな。
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