『ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』を読んだ。

日銀から派遣されたベテラン銀行員が、知恵と胆力でルワンダの経済を立て直し てしまうまでの話。

この人はおよそただものではなく、帰国子女で東大法科に学び海軍士官を経て日 銀で海外勤務を重ね、英語仏語に堪能で能力も経験も十分という人物。その人の 思考と行動の記録が本人の言葉で読めるのだから、ドキュメンタリーとしても物 語としてもめちゃくちゃ面白い。

  • 服部正也
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%8D%E9%83%A8%E6%AD%A3%E4%B9%9F

    幼少時は、ロンドンで7年間、上海で3年間をすごす。 … 日本銀行に入行後、フルブライト基金によりアメリカに留学、ミネソタ大 学大学院で学ぶ。帰国後パリに 3年間駐在し、同銀行外国局渉外課長をつ とめる。

でも、特別なことをやったわけではない。現地を調べて、当事者である一般市民 によく話を聞いて、どうあるべきかを考えて、それが実現するように、知識と経 験から現実的な手を考えて、実行する。それだけ。すべてにおいて、上から押し つけたり与えたりするのではなく、現地の人々自身の自助努力を助けるという考 え方が徹底している。経済活動が軌道に乗ったら助っ人外国人は現地人に引き継 いで去るべきというポリシーにも、それは見て取れる。

実務においては、理想を追いつつも、常に現実を見てフォールバックプランを用 意している。また交渉時には相手の立場を考えて妥当な落としどころを考えてい る。

書き方もうまい。経済の話なので数字も出てくるけれど、前後の文章で背景や意 味がわかりやすく説明されているので、ゆっくり読んでよく考えれば素人にも十 分理解できる。このあたりの説明のうまさも抜きん出ている。

こういう人がいたから、日本人は勤勉だとか優秀だとかいう評判ができたんだろ うか。

地味な本だけれど、これは評判どおりかなりおすすめ。中高生の時に読んでおき たかった。